2020.01.09
秋田魁新報社|つながる力|社会減と向き合う(1)
2020年(令和2年)2月27日木曜日、秋田魁新報社で紹介いただいた記事です。
先祖のために(上)
古里の墓守る手助け
年が明けて間もなく、北秋田市(旧鷹巣町)出身の成田竜也(42)は、東京・新宿区の一軒家を訪れた。中へ招かれると、仏壇に線香を上げ、手を合わせた。
「成田さんがいてくれて本当に助かった」
家主で北秋田市(旧合川町)出身の松橋里至さん(69)が感謝を口にした。
松橋は18歳の時に父を亡くし、19歳で母アイさんと共に上京。長く一緒に暮らしてきたアイさんは一昨年11月、104歳で亡くなった。葬儀は都内で済ませたが、アイさんは生前、「家族と一緒の墓に入りたい」と望んでいた。その思いに応えようと遺骨を古里の墓に納める手伝いをしてくれたのが、成田さんだった。
成田さんは、荒川区で葬儀会社東日本メモリアルサービスを営みながら、秋田出身者の依頼を受けて古里の墓掃除、墓参りの代行、葬儀会社の紹介、お寺とのやりとりなどをサポートしている。
葬儀と一連の流れで行うものもあれば、単独で依頼されるケースもある。人口減が進み、古里に頼れる親類がいなくなった人からの要望で特に多いのが、遺骨搬送や墓掃除という。
こうした活動をするようになったきっかけは、中学時代の友人らに声をかけて2013年に立ち上げた「東日本メモリアルサービス県人会」。メンバーは会長の成田さんをはじめ、秋田を出て首都圏で暮らす30代の5人。みんな、秋田にいる親のことを気に掛けていた。
松橋さん宅で遺骨搬送やその後の墓掃除について報告する成田さん(右)=1月9日、東京・新宿区
遺骨搬送、掃除代行…思いに寄り添う
秋田を離れて暮らす自分たち。秋田で生活している両親や家族。どちらも幸せに暮らすために何ができるのかを話し合う場として、「県人会」を立ち上げたのだった。
「今、親が倒れたらどうする?」
「すぐに戻らなければいけないけど、仕事を辞めて秋田で暮らすことはできないな」
メンバーの口からは、将来への不安がこぼれた。
「問題があるなら、解決するすべを探せばいい」。成田さんは、まずは自分ができる分野として、墓掃除の代行を思いつき、15年ごろから行動に移していった。
高齢になり、体の自由がきかなくなると、古里に帰省するのも容易ではなくなる。そんな人たちの思いに寄り添った活動として、徐々に依頼が舞い込むようになった。
当初は、自身の帰省のタイミングに合わせ墓掃除を請け負っていたが、今は秋田の友人らの協力も取り付け、掃除を委託する仕組みができてきた。「墓守の仕組みを構築すれば、首都圏にいても安心できる」と成田さんは語る。
県人口が減る中、墓や空き家の管理は、いずれ直面する社会的課題と言えるかもしれない。「それぞれができる分野で支援が広がればいい。秋田がピンチだったら、県外にいるわれわれが秋田の人とつながることで解決する手助けをしたい」
成田さんは首都圏にいながら、こんなことを考えている。(大原進太郎)
お墓掃除代行を動画で紹介しています。ご覧ください。