2020.03.01

秋田魁新報社|つながる力|社会減と向き合う(2)

2020年(令和2年)3月1日日曜日、秋田魁新報社で紹介いただいた記事です。

先祖のために(下)

故人を東京から慰霊

「秋田に先祖の墓があるけど、年を取ってしまい行くのが難しくなってきた」「親戚に管理を頼むのも気まずい」
 首都圏秋田県人会連合会の事務局長を務める成田竜也さん(42)=北秋田市(旧鷹巣町)出身=は、連合会の会合でこうした話をよく耳にしてきた。会員も高齢化が進み、以前のように行動できなくなってきている人が増えてきたのだと感じた。
 都内で葬儀業を営む成田竜也さんにとって、県出身者らを対象に古里の墓を守るといった手伝いをすることは、東京に出てきた同郷の友人らと話し合いの中から、自然と出てきたことだった。
 その流れで「秋田に眠る故人を東京から慰霊する機会をつくることはできないか」と考え、成田さんを中心に「あきた人合同慰霊祭」を企画した。秋田から僧侶らを招き、参加者それぞれの故郷の先祖、肉親、恩師、友人らを慰霊するというものだ。
 親交のある県出身者に呼び掛け、昨年12月に実行委員会を組織して準備を進めてきた結果、開催は東京・上野の寛永寺で4月12日午後1時からと決まった。
 上野といえば、かつては「東京の玄関口」。古里を離れた人たちの「始まりの地」とも言えるこの場所から先祖や家族に思いをはせることで、「秋田のつながりを保ってほしい」と成田さんは考えている。

4月の「合同慰霊祭」と「ふるさとを語り継ぐ集い」に向けて、浅利香津代さんと打ち合わせをする成田竜也さん(右)=2月17日、東京・千代田区

県人会、古里への思い継承

 当日は、女優の浅利香津代さん(秋田市出身)、読売新聞特別編集委員の橋本五郎さん(三種町出身)を招いての「ふるさとを語り継ぐ集い」も同時に開催する予定。
 企画には、先祖の慰霊以外にも大きな狙いがある。「秋田を思う心の継承」だ。
 「このまま県人会の会員の高齢化が進めば、会の存続自体が難しくなるのではないか」と成田さんは案じている。さらに、県出身者の家族が「親は秋田だけど自分たちは関係ない」という考え方になってしまえば、つながりが途絶えてしまうとの懸念もある。「秋田の将来を考えた時にそれはもったいない」と話す。
 成田さん自身、今も秋田で暮らしたいとの思いは常に持っているが、仕事の関係などで実現は難しい。だからこそ、古里の力になりたいという思いが募るという。
 「親や先祖が秋田出身であればその事実は消えない。誰しもいつかは死ぬが、古里への思いは”相続”すれば何十年先にも伝わる」と成田さん。
 「お盆や小学に秋田に行って、先祖に手を合わせる人が一人でも増えてくれるだけでいい」。秋田を思う気持ちは人一倍強い。(大原進太郎)

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